2割の働かないアリ,無駄な存在ではなかった!
以下は,讀賣新聞オンライン提供記事のほぼほぼコピペです。最後に≪補足≫を付け加えました。
[New門]は,旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「無駄」。
現代人は,役立たないものを無駄だと考え,切り捨ててしまいがちだ。果たして本当に無駄なのだろうか。生き物たちの世界に目を向けてみると,一見役立ちそうもないものも,とらえ方次第で,重要な意味や新しい価値があるということを教えてくれる。
■緊急事態に出動する「待機要員」
寓話(ぐうわ)「アリとキリギリス」で働き者として描かれるアリ。しかし,集団の中には,鈍すぎて仕事に気がつかない働きアリが交じっているという。働かないアリが無駄な存在かというと,そうでもない。
北海道大の長谷川英祐准教授(進化生物学)が日本全国にいる「シワクシケアリ」を観察したところ,全体の2割程度の働きアリで仕事をしているそぶりが見られなかった。さらに,コンピューターを使って,働きアリが一斉に働くコロニー(集団)と,働かないアリが一定程度いるコロニーを仮想して比較すると,働かないアリがいる方が,やや長く存続することがわかったという。
一斉に働くと短期的には仕事の効率はいいが,やがて皆疲れて動けなくなる。卵の世話など中断できない仕事が滞って,コロニー全体の維持に影響する。働かないアリがいれば,疲れて休んでいるアリに代わって働ける。長谷川さんは,働かないアリは緊急事態に出動する「待機要員」と推測,「目先の効率だけを追い求めすぎると,その集団は早く滅ぶ」と指摘する。
■無駄の進化 生物多様性支える
無駄は,自然界での様々な生き物の共存に一役買っている。
東北大の近藤倫生教授(生態学)らの研究によると,生き物の多くは,種の繁栄にはつながらない見た目や機能を進化させるためにエネルギーを無駄に割いている。例えば,ひときわきらびやかな羽を持つオスのクジャク。美しい羽は,メスに選ばれて子孫を残しやすくする反面,目立ちすぎて天敵に狙われやすいなどのデメリットにもなる。
他の生き物たちとの生存競争を勝ち抜くのに有利な特徴ではなく,クジャクという種の全体からみると,繁栄にはつながらない。鳥たちがさえずる歌や求愛ダンス,オスのシカの角なども,種の繁栄にとっては無駄な機能なのだという。
だが,生物多様性という観点でみれば,逆に大切な進化となる。これらの進化にエネルギーが注がれることで,他の生き物を根絶やしにする強い種が登場しにくくなる。その結果,弱い種も生き残れるといい,近藤さんは「無駄の進化が生物多様性を支えている」と強調する。
■仕事は7割で
アリやクジャクなどの生態をひもといてみても,無駄には,様々な意味があるようだ。
「目的でとらえ直せば,多くのことは無駄ではなくなる」。「無駄学」の著書もある東京大先端科学技術研究センターの西成活裕教授が解説してくれた。
一例を挙げると,本の目的を「情報をできるだけ多く伝えるもの」と考えれば,四隅の余白は無駄なものだ。しかし,「知的活動を助けるもの」だと定義すると,書き込みもできる余白は無駄ではなく,むしろ欠かせないものとなる。
西成さんが提唱するのは,7割くらいの力やメンバーで取り組み,予定の間にはゆとりを設けるという仕事術だ。仮に病欠などが相次いだとしても,残り3割のメンバーでカバーできる。この3割は短期的には無駄に見えても,長期的な計画を立てたり,詰まってしまった予定を解消したりするのに使える。
西成さんは「何が起きるのか予測できないのが現代だ。いざという時に対応できるようにゆとりを持っておいた方が強い。そのゆとりが普段は無駄に見えてしまうだけだ」と話している。
≪働かないアリだけを集めると,その中の一部は働く集団に変わるそうです。また,働くアリだけを集めると,その中の一部は働かない集団に変わるそうです。アリの集団に人間集団を当てはめる試みは,面白いですね≫
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