以下は,日経ビジネス提供記事(吉野 次郎 氏による)のほぼほぼコピペです。
日本の高齢男性は孤独だ。内閣府が2020~21年に60歳以上の高齢者を対象に実施したアンケートによると,親しい友人が「いない」と回答した日本人男性の割合は,40.4%にも上った。同時に調査したスウェーデンの9.8%,ドイツの14.3%,米国の18.8%を大きく上回る割合となっている(「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」から)。
日本人男性が,職場以外で人間関係を積極的に構築してこなかったことが,「親友ゼロ」の背景にありそうだ。そのような「仕事人間」が60代を迎えて定年退職すると,家庭以外に居場所のない,孤独な引退生活を送ることになる。
しかも余生は長い。今年7月,厚生労働省は日本人男性の平均寿命が81.05歳となったと発表した。60歳で定年退職した場合,20年以上も社会性に乏しい生活を送ることになりかねない。充実した余生を送るためには,趣味を見つけたり,ボランティア活動にいそしんだりするなど,積極的に活動領域を広げていく必要がある。
充実した余生の送り方として,僧侶になるという道も存在する。京都市右京区にある臨済宗妙心寺派は2013年に,「第二の人生プロジェクト」を立ち上げ,定年退職した人の出家を支援してきた。これまで500人から問い合わせを受けるなど,広く関心を集めてきた。うち実際プロジェクトに参加した人は数十人に上る。
妙心寺派の寺は全国に約3300カ所あり,うち約1300カ所は専任の住職が不在だ。近隣の寺の住職が兼務する形で管理している。第二の人生プロジェクトで修行を積んだ高齢者は,こうした専任住職が不在の寺に入って,地域社会に貢献することが期待されている。妙心寺派の久司(くし)宗浩顧問は,「宗教に基づく暮らしを送ることで,余生をより意味あるものにできるはずだ」と語る。
60代になると薄れる金銭欲
大半の会社員が引退する60代は,出家するのに適した時期ともいえる。一般的に若い頃よりも物欲や金銭が弱まり,世俗的な価値観が薄れてくるからだ。
内閣府が2022年10月に実施した「国民生活に関する世論調査」で,「心の豊かさと物質的な豊かさのどちらを重視するか」と質問している。それによると,「物質的な豊かさ」と回答した人の割合は18~29歳で56.0%なのに対して,60代は44.0%まで低下する(「どちらかといえば物質的な豊かさ」を含む)。70代以上だとさらに38.9%まで下がる(同)。
同調査では「働く目的」についても聞いている。「お金を得るために働く」と回答した人の割合は18~29歳で79.3%に達する一方,60代は61.6%,70代は40.8%まで低下する。 逆にいくら歳を重ねても,若い頃と変わらずに物欲や金銭欲が強いままだと,あまり僧侶には向かない。久司氏は「僧侶になればお金をもうけられると考えて,出家について問い合わせてくる人がいる。別にお金もうけが悪いわけではないが,恐らく経済的に潤うことはない。お寺に入れば,ボランティアのような活動に励むことになる」とし,奉仕の姿勢を求める。 曹洞宗の松渓山智源寺(京都府宮津市)でも,定年退職後の出家希望者に門戸を開いてきたが,やはり世俗的な動機で門をたたく者が少なくないという。髙橋信善住職は,「老人ホームに入る感覚で,寺に入りたいと申し出てくる人がいる。あるいは単に仏教について知識を得たいがために,出家を希望する人がいる。知識欲を満たしたいだけの者は,自己を捨てられず,修行の邪魔になることが多い」と語る。
智源寺の髙橋信善住職
そうした世俗的な考え方に染まったままだと,出家はなかなかうまくいかないだろう。修行に耐えられず,1週間で僧侶になることを断念する人もいるという。
第二の人生で僧侶を目指すということは,自らに厳しい生き方を課すことを意味する。髙橋氏は「楽な道のわけがない」と,覚悟を求める。
お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>