子どもの成長をさまたげる親が言いがちな「NGワード」とはいったい? 教育ジャーナリストの中曽根陽子氏による新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』より一部抜粋・再構成したものを,さらに加除訂正及び<私見>を付加したものです。
1冊の図鑑がきっかけで大成長
このことを体現しているご家族の例を一つ,ご紹介しましょう。
大人に交じって学会に所属し,原生生物の研究をしている春山侑輝さんという10歳の男の子とそのご家族の話です。
侑輝さんは,3歳のときにお母さんに買ってもらった『大昔の生きもの(ポプラディア大図鑑WONDA)』(土屋健著,ポプラ社)という1冊の図鑑から微生物・寄生虫など,ミクロの世界で起こっていることに興味を持ち,4歳になると,『DVD付 WONDER MOVE 人体のふしぎ』(講談社)を読み,免疫・ウイルスに興味を持ち始めたそうです。
本の中にあった山中伸弥さんやiPS細胞,免疫の戦いというページを読んで,タンパク質に興味が広がり,やがて生物学に興味を持ち,原生生物の世界にのめり込んでいきます。自分の興味のおもむくままに探究を続けた結果,7歳で孫正義育英財団の財団生に選ばれました。
「何かにハマるとそのことを知りたがるので,子どもの興味のおもむくまま,本を与えていた」というお母さん。でも図鑑を与えたのは戦略ではなく,短い本だとすぐ終わってしまって,何度も読むのが自分もしんどいので,図鑑なら長持ちするかなと思ったから……。それが今日につながるのですから,わからないものです。
1日に40冊もの本を読破すること
侑輝さんは小さいときから本が大好きだったので,親子で毎日のように近所の図書館に通い,「この本は○歳用」などといったことに縛られず,図録や写真など魅力的なものが1ページでもあれば大人用のものでも与え,読めないところは読んであげました。侑輝さんに聞くと「単語は知っていたので,内容はほぼ理解できた」そうです。
ときには,1日40冊も読んだことがあるそうですが,実はお母さん自身も熱中すると没頭するタイプで,それは特に驚くことではなかったようです。自分も好きなことに没頭する楽しさは知っているし,没頭することを許されてきたので,子どもにも同じように対応をしたと言います。
ただ,学校では,自分の大好きな生物や科学について話しても,周囲から理解してもらえず,休みがちに。その時期が一番苦しかったというお母さんですが,財団生になって3年。今はインターナショナルスクールに転校し,楽しく学校に通っています。
「年上の財団生と一緒に話ができて,世界が広がるのが楽しい」と侑輝さん。今は数学にも興味を持っているそうです。自分が興味を持っていることなら,ちょっと難しいことでも喜んで探究し,ここまでいくという事例です。
<親御さんが育ったころより,やる気や特性を持ったお子さんに対応できる環境はできつつあります(十分とは言えませんが)。そのようなお子さんに対応することも親御さんの務めではないでしょうか?また,そうでないお子さんについてもそれなりに対応することも同様です。お子さんの言動の結果・責任は,お子さん自身しか受け止める・とることができません。けっして親御さんが代替してはいけません。そのことだけはお子さんが知る必要はあります。ただし,お子さんには「甘え」たい時期や場面があります。そんな時にこそ,対応できる親子関係を普段の生活で培っておきたいものです。子育ては「一大事業」です。なお,親御さんは子育てを通して「親」になり,人間として成長することでしょう>
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