巷(ちまた)の学校blog

学校等では教わらなかったことを学び,賢い市民生活(家庭,仕事など)を営むためのブログです。ビジネスにも役立つかも。時には,就職や小論文にも言及。

今の若者が「とにかく差がつく状況が苦手」な理由 横並び主義の完全一律な平等分配思考

 以下は,東洋経済オンライン提供記事のほぼほぼコピペです。最後に≪私感≫を付け加えました。

 最近,「成功した人もしない人も平等にしてほしい」と要求する若者が増えているらしい,と聞いたらあなたはどう思うだろうか。

 新著『先生,どうか皆の前でほめないで下さい』で複雑な若者心理に迫った金間大介氏は,イノベーションとモチベーションの研究家だ。金沢大学と東京大学で教鞭を取り,若者と日々接している著者の金間大介氏は,単に皆で何かを一緒に食べるといったシチュエーションでも学生たちの平等思考を思い知らされるという。その例が「大皿料理」や「ホールケーキ」を前にしたときの反応だ。

とにかく差がつく状況が苦手

 突然だが,大半の大学生は大皿系の食事が苦手だ。どうしてもきれいに均等分配できないからだ。

 コストコで巨大なホール型ティラミスを買ってきたときなどは大変だ。それを11人でシェアするときなどはますます大変だ。そもそも誰も切り分けようとはしないし,嫌々切り分け係になった人は,いかにしてきっちり11等分するかで四苦八苦する。

 私は今の若者の心理的特徴を『先生,どうか皆の前でほめないで下さい』の中で分析し,「いい子症候群」というフレーズがぴったりくるという結論に達した。いい子症候群の特徴はいくつもあるが,その1つが,とにかく差がつく状況が苦手であるということ。特に過敏に反応するのが「自分だけが何らかの利益を得る」状態だ。

 円型をきっちり11等分しようとするのも,少なくなった人がかわいそうというより,多くなった人の気まずさを意識してのものだ。

 さて,ここでクイズを1つお出ししたい。次の4つの選択肢のうち,あなたはどれが最も公正な分配だと思いますか?

① 平等分配

② 必要性分配

③ 実績に応じた分配

④ 努力に応じた分配

 選択肢について少し解説すると,①平等分配とは,その名から連想されるとおり,年齢や性別,個々の能力などの個人差をすべて無視し,完全一律に分配することを指す。最もシンプルでわかりやすい分配方法であると言えよう。

日本人が思う最も公正な分配方法

 ただし,このように均一に分配しようとするとき,もっとほしいという人と,逆に自分はいらないという人が出てくることも多いだろう。リンゴを皆に配りましょうと言っても,リンゴが嫌いな人にまで配ってしまってはもったいない。そんなときにまで均一に分配することが全体最適だとは思わない。

 そこで②必要性分配が浮上する。これは個人の必要度に応じて分配量を変化させることで,より多くの人のニーズを満たそうとする考え方だ。仮に職務上は同じ給与水準の人でも,扶養家族を多く持つ人に(扶養家族手当として)少し多めに配分することは現実に行われている。少なくともこれが公正の1つの考え方であることに異論がある人は少ないだろう。

 次は③実績に応じた分配だ。このあたりから分配方法はさらに現実的に,より意見が分かれる領域に突入していく。③はいわゆる成果主義に代表される分配方法で,多大な成果を上げた人は,それだけ多くの労力や費用を犠牲にしたのであり,分配はそれに応じるべきという考え方になる。

 ②の必要性に応じて分配する案は一見かなりフェアであるものの,分配対象者がまったく同じ量または質の仕事をしたという前提が必要になる。仮に扶養家族を持たないAさんのほうがBさんより組織に貢献したとして,それでも扶養家族が多いという理由だけでBさんの報酬が多かったら,Aさんのモチベーションはどうなるだろう。

 このように②と③は反目するケースも出てくる。必要度の高い人,あるいは貧しい人に多くの施しを与えることが人道的であると言う人もいるし,必要度とは関係なく成果や貢献度にこそ報いるべき,そうしないと人も組織も成長しない,という論理も説得力がある。

 このトレードオフを緩和する可能性を持つのが,④の努力に応じた分配である。その名のとおり,個人の努力量に応じて分配量を決定することで,③実績に応じた分配と対比されることが多い。実績は生まれ持った才能や育った環境の違いに影響される場合も多いため,③だと才能や環境に恵まれなかった人はいつまでも低い報酬に甘んじるしかない。一方,努力量は才能や環境と違い,自分で100%コントロールできる指標になるため,フェアで公正であるという考え方になる。

 さてさて,前置きが長くなったが,改めて皆さんはどれを支持するだろうか? どれが最も多くの人の支持を集めると思うだろうか?

 実は,実際にアンケートを用いて調査した結果がある(社会階層と社会移動全国調査:SSM調査研究会編〈1998〉『1995年SSM調査シリーズ』,および佐藤俊樹『不平等社会日本:さよなら総中流』〈中公新書〉より)。

 結果はこうだ。

① 平等分配:男性5.2%,女性7.5%

② 必要性分配:男性9.8%,女性9.1%

③ 実績に応じた分配:男性30.4%,女性16.6%

④ 努力に応じた分配:男性51.2%, 女性62.2%

 いかがだろうか? ④の「努力に応じた分配」が半数以上の支持を集める結果になっている。

現在の大学生が思う最も公正な分配方法

 これだけでも興味深いテーマとデータだが,もちろん議論には続きがある。と言うか,これからが本題である。

 実は筆者も大学生を対象としてデータを取ってきた。データは2018年12月から2020年11月までの間で複数回にわたり収集した(対象者:複数の大学における2~4年生および大学院1年生:211名)。

 その結果はこうだ。

① 平等分配:男性49.0%,女性53.2%

② 必要性分配:男性5.9%, 女性5.5%

③ 実績に応じた分配:男性19.6%,女性16.5%

④ 努力に応じた分配:男性25.5%,女性24.8%

 正直,私はこの結果を見てとても驚いた。若者のモチベーション研究をしている筆者が驚くのだからよっぽどだ。

 何よりもまず,前項で紹介した日本人全体の結果と大きく異なることは一目瞭然である。その中でも最も目を引くのが,①平等分配の多さだ。ずばり,現在の大学生の半数は,単純な均一分配が最も公正だと考えていることになる。今の若者の間では,いかなる理由にかかわらず,分配量を変えること自体に違和感を持つ人が増えているのだ。

 その分,残りの3つが票を減らしている。

 特に着目したいポイントは2つある。確認しておくが,最初に紹介したSSM調査は対象が全世代にわたっていること,調査時期が1990年代であることの2点において筆者の調査とは異なる。その全世代調査で2番目に票数が少なかった②必要性分配が,若者ではさらにシェアを落とす結果となった。これがポイントの1つ目である。

 必要性分配は先に述べたとおり,実績や努力にかかわらず,今それが必要だと思われる人に多く施すという考えだ。捉え方によるが,困っている人に多く配分するという意味において,一般的には最も人間味のある分配方法だと言えるだろう。それを,今の大学生の多くは選択しない。

 ポイントの2つ目は,④努力に応じた分配が大きく票を落としていることだ。最初のSSM調査で(③実績分配ではなく)④努力分配が最多というのはいかにも日本人らしい,と思った方は多かったのではないだろうか。しかし大学生の間では,その割合が半減している。

 いい子症候群の特徴である「とにかく差がつく状況が苦手」とは,言い換えれば究極の横並び主義であり,それが顕在化した象徴形が完全一律な平等分配なのだ。

 さて,冒頭のケーキを切り分ける話はその後どうなったか。

 いかにしてきっちり11等分するかで四苦八苦している学生に,筆者はこう言う。

「先生は偉いからふたり分ね」

 おっと,これで12等分して,そのうちの2ピースを先生に渡せばいいではないか! 先生,まさに神!! 

≪余談ですが,1は3で割り切れないと教わった子が「リンゴ1個は3等分できるよ」と言ったことを思い出しました。「状況が苦手」であっても,克服できない訳ではないような……≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>