続・リアル店舗が「ネットに勝つため」の5つの手段!
弓削徹氏の題・文(新刊『即買いされる技術 キャッチコピーはウリが9割』より一部抜粋・再構成)をほんの少し加除訂正・ほぼほぼコピペに≪私見≫を付加したものです。
リアル店舗の5つの方向性
商店や町工場の職人さんが,自身の専門知識を教える「街ゼミ」も同じです。個店がユニークな体験やイベント性を設けてネットにはない価値を発揮する。そのためには,具体的に5つの転化が有効な方向性であると考えています。
【リアル店舗5つの方向性】
①専門化
②サービス化
③イベント化
④スクール化
⑤BtoB化
それでは,各項目を説明していきます。
①専門化
狭い分野に絞り込み,「このカテゴリーでは日本一」となる──。ネット店舗は「店頭」はなく,在庫を持ちやすいため,どうしても総合化しますが,リアル店舗はバランスよく品ぞろえをしていけば,たまにしか売れない商品は淘汰されていきます。また,なんでもある店舗は,欲しいものが探しにくい店舗でもあります。
そして,目的買いをしたい人が探してまで来店してくれるためにも,特色を出すことが必要です。たとえば,衣料品全般ではなく靴下に特化する,さらにスポーツソックス専門店へと絞り込む。そして,特定種目を決めて掘り下げていく,など。
相模原にある文具店では「左利きグッズコーナー」を展開し,たびたび新聞やテレビに取り上げられています。左利き用商品の売上ボリュームは大きくないとしても,同店は発信力のある有名店なのです。
②サービス化
家電を買うとき,空気清浄機のようにコンセントにつなげばすぐに使えるものは,ネットで買うことに躊躇はありません。しかし,エアコンや洗濯機など,設置に専門家を必要とする家電となると実店舗で買う人が増えます。あのジャパネットたかたも,エアコンの設置サービスが万全であることを強調して売上を伸ばしました。
たとえば,あなたが電動アシスト自転車を販売するなら,新品だけを売ろうとせず,まずはバッテリー交換に特化するのも一つの方法です。そうすると,なかには買い替えのお客様が新品を買ってくれるようになるものです。また,高所得者層や高齢者は,とくに接客サービスの質を気にする傾向があります。
その他にも,購入の相談係という役割やオーダー加工,御用聞きや出張などの人的サービスをていねいに展開することによって,ネットショップや大手チェーンでは満たせないニーズをつかむことができます。
③イベント化
人は人と会いたい生き物です。また,モノはあまり買わないけれど,体験することにはおカネを惜しまない傾向もあります。せっかくリアル店舗という空間があるのですから,そこを人と出会える場として演出し,人を呼び込むのです。
たとえば,地元の人的ネットワークや交流会の拠点になるような活動をしていくと,店舗はリアルSNSのような付加価値を持ちえます。定期的なイベントを開催し続けていると,単にモノを売る店舗ではないと認識されていくのです。
これは,飲食店などに限りません。複数店舗が協力してはじめた朝市が,隣市からも人を集める名物になったところもあります。温泉旅館でも無数のネコと触れ合えるところ,鉄道模型が走っているところもあります。そうなると,ふつうの観光客とは違う人を強く引きつけることができます。非日常体験のできる演出もウリになるのです。
④スクール化
これも,モノをコト化する考え方です。物販をソフト化し,「学びの場」として価値を高めていくのです。前述の書店なら速読教室を開く,またはホームセンターがDIY教室を,ペットショップが飼い方教室,文具店が書道教室を開いたりする。あるいは,美容室がヨガ教室を開催するなども,美を追求する共通点があるのでいいでしょう。
食料品店であれば料理教室になります。同じ野菜を取り扱うのでも,野菜ソムリエになって専門的な知識を啓発していけば,感謝されながら販売につなげることもできます。パン屋さんならパンの焼き方,ケーキ店ならお菓子づくり教室へと展開できるでしょう。スポーツ用品店ならスポーツ指導,コーチング,用具の手入れ法を指導するなどです。
単価を上げるために企業を相手にしよう
⑤BtoB化
一般の生活者を相手にするビジネスでは,単価が高くなりにくいと言えます。これが企業や団体相手となると,販売量や金額も高くなり,売上も安定する傾向にあります。たとえば,人材系や営業ノウハウ系のコンサルタントも,個人のビジネスマン向けにセミナーやコーチングをするのではなく,企業の研修案件を受注する方向へ軸足を移せば,売上は数倍にもなります。
企業や団体向けの営業と言っても,それほど敷居が高いわけではありません。クリーニング店なら,家庭用ではなく,キャバクラなどの大型飲食店や舞台衣装専門へと展開すればいいのです。あるいは寝具店が,宿泊施設や公共施設への貸し布団サービスを売り込むこともできます。企業や役所では,災害時用の寝具の備蓄需要も開拓できるのではないでしょうか。企業や職域向け,または外商,自治体・学校向けなど,対象はさまざまです。
以前,ある塗料メーカーから,木部の傷つき防止・光沢コーティング剤を開発し,家庭向けにセールスをしているがうまくいかない,という相談を受けたことがありました。一般家庭が,床やカウンタートップに高額なコーティングをするという習慣はありませんので,営業は苦戦して当たり前です。このケースでは,傷つき防止によって,インテリアの美しさを保つことが,集客に影響を与えるようなビジネスユースを狙うべきです。ホテルやレストラン,劇場など,施設の美観維持やメンテナンスに,もともとコストがかかっているような業態です。
傷つき防止や光沢維持に関するエビデンスを提示でき,費用対効果が見合うと理解してもらうことができれば,受注に至るのです。実際,この会社は,営業先を上記のような施設に変えたことで,受注できるようになりました。
≪苦戦しているリアル店舗の皆さんの「仕掛け」のヒントになれば,弓削徹氏もお喜びなのでは,いや,本が売れないとご立腹?でしたら,お詫び申し上げます≫
お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>