巷(ちまた)の学校blog

学校等では教わらなかったことを学び,賢い市民生活(家庭,仕事など)を営むためのブログです。ビジネスにも役立つかも。時には,就職や小論文にも言及。

生涯現役!? コロナ禍でも「働く年金世代」は増えている?

 以下はAll About,マネーガイドの川手康義氏による記事のほぼほぼコピペです。最後に≪私感≫を記しました。

 総務省のデータをみると働く年金世代が増えています。昨年はコロナ禍であるにもかかわらず減少することなく増加していました。総務省のデータをみると働く年金世代が増えています。昨年はコロナ禍であるにもかかわらず減少することなく増加していました。これからも働く年金世代は増えていきそうですが,それを支える国の政策について解説したいと思います。

コロナ禍でも働く年金世代は増加しています

 2020年(令和2年)総務省の「労働力調査」では,労働人口が毎年時系列的に公表されています。昨年はコロナの影響もあり労働人口総数では18万人の減少でしたが,65歳以上を見ると15万人の増加です。

f:id:ohenstuff:20211225081345p:plain


 コロナ禍でも65歳以上の労働人口は増えています(参考:労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の概要)

 若い世代の働き口が減る一方で,65歳以上のいわゆる年金世代の働く人は増加していることが分かりました。

国は高齢者が働く環境整備を進めています

 働く年金世代が増えている理由には,国が高齢者の働きやすい環境づくりを政策面で後押ししている背景があります。

 その一つとして挙げられるのが「雇用年齢の引き上げ(高年齢者雇用確保措置)」です。

 現在企業には,希望する全員が65歳まで働けるように何らかの措置(*)を取ることが義務化されていますが,2021年4月からは年齢が70歳に引き上げられた上で「努力義務」となりました。このことから,近い将来70歳の雇用確保措置が義務化されるのは間違いないと思われます。

「定年の延長」「定年制の廃止」「継続雇用制度の導入」の3つを指します

2022年4月からは年金面でも働きやすくなります

 2022年4月以降にはなりますが,年金面でも高齢者の働く意欲を削がないよう,次のような2つの改定が行われます。

▼在職老齢年金制度の緩和

 現在,老齢厚生年金をもらいながら働く場合,年金額と賃金の月額合計が60~64歳であれば28万円,65歳以上ならば47万円を超えてしまうと,その超えた全部または一部の年金が減らされる「在職老齢年金制度」というものがあります。

 これが2022年4月からは60~64歳の方も47万円に緩和されるため,60歳以降に老齢厚生年金をもらいながら雇用継続される方などは賃金月額をあまり気にせず働けるかと思います。

▼在職定時改定

 65歳以上で老齢厚生年金をもらいながら働く方について,65歳以降に納めた厚生年金保険料を毎年10月からの年金額に反映することになりました。

f:id:ohenstuff:20211225081442p:plain


 2022年4月からは毎年10月に在職定時改定が行われます

 これまでは,退職し厚生年金を脱退しなければ老齢厚生年金額の改定が行われませんでしたが,今回の改定により,退職することなく65歳以降に払い込んだ保険料が毎年の年金額として反映されますので,年金を受給しながら働く方のモチベーションのアップにつながりますし,何よりも経済基盤の充実が図られるのではないでしょうか。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。働く高齢者は年々増えており,その傾向は現在のコロナ禍でも変わりありません。また国は働く意欲のある高齢者を後押しする政策を各方面で推進しており今後もそれを拡充していくものと思われます。

 「老後は年金をもらいながらゆっくり余生を過ごす」というスタイルは昔のものであり,今後はアクティブシニアという言葉が示すよう,プライベートでも仕事でも生涯現役が求められる時代なのかもしれません。

参考:生涯現役,コロナ禍でも働く年金世代は増えている?(https://allabout.co.jp/gm/gc/487896/

≪増えている理由は,スタイルの変更によるものなのでしょうか?仕事にアクティブな高齢の方は,プライベートでもそうでしょうから,数は変わりません。そうだとすれば,余生である老後を迎えられず,働かなければならない高齢の方が増えたとも言えます。そして,それを支援する政策が必要になったのです。なぜなら,通常,政策とは必要があるから生まれるものだからです。もし人口減少・人手不足を糊塗するためなら……,生涯現役の美名の下に高齢の国民を酷使していることになります≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

経済対策・その3「政策目的」は何か?

 最新刊『変異する資本主義』ダイヤモンド社、11月17日発売)で、世界最先端の財政論争を分析した中野剛志氏が、日本における「バラマキ論争」が不毛に陥る理由を解説した記事のコピペです。

「経済政策の議論」を実りあるものにする方法

 その上で、第二の基準となるのが、「政策目的」である。

 例えば、現金給付については「貯蓄に回るだけで、消費につながらない」という批判がある。しかし、その前に確認すべきは、現金給付が何を「政策目的」としているかである。

 消費の喚起が「政策目的」ならば「貯蓄に回るだけだ」という批判は、確かにあり得るだろう。

 しかし、現金給付の「政策目的」が、消費の喚起ではなく、コロナ禍で苦境に陥った国民の救済にあるのだとしたら、この批判は成立しない。生活が苦しい国民が、給付された現金を貯蓄に回して、いったい何が悪いのだ。

 このように、現金給付を主張するにせよ、反対するにせよ、その「政策目的」が何かをはっきりさせなければ、せっかくの論争も不毛に終わるのである。

 第三の基準は「政策効果」である。

 例えば、現金給付を長く続けたり、過度に高額の給付を行ったりすると、国民が給付に依存して、勤労意欲を失うという「モラル・ハザード」を招くだろう。

 したがって、現金給付の制度は、モラル・ハザードを招かないようなものに設計すべきである。

 ところで、国民の大半がモラル・ハザードに陥ると何が起きるか。

 国民は働くのをやめて、消費ばかりを増やすわけだから、供給が不足し、需要が過剰になる。要するに、モラル・ハザードは、(デマンドプルの)高インフレを引き起こすのである。

 逆に言えば、日本は長期のデフレであるから、現金給付によるモラル・ハザードを心配するような状況にはない。もっと言えば、現金給付が足りなさ過ぎるということだ。

 もっとも、現金給付のようにモラル・ハザードによる高インフレを起こすことなく、消費を喚起する効果のある政策もある。政府が、現金を給付するのではなく、仕事の機会を与えて給与を増やすという政策である。具体的には、公共事業を行ったり、公務員として直接雇用したりするのだ。

 さらに、現金給付や雇用創出よりも、もっと確実な消費喚起の効果がある政策もある。

 それは、消費減税である。

 特に、生活困窮者ほど、所得に占める消費の比率が高いから、消費減税こそ、「本当に困っている人たち」を助ける政策となる。

 しかし、現金給付について「消費を喚起しない」とか「本当に困っている人たちに限定すべきだ」と主張する論者たちの中で、消費減税を主張する者はほぼ皆無である。それは、言うまでもなく、彼らが財政破綻論者だからである。

 このように、現金給付を巡る批判の大半は、「財政の余地」「政策目的」「政策効果」を明確にしないまま、ただ「バラマキ」というレッテルを貼っているだけである。

 特に、「財政の余地」に関する理解を間違えているため、「政策目的」や「政策効果」の議論までもが歪んだものになってしまっている。

 「財政の余地」について正しく理解すれば、経済政策の議論は、もっと豊かで実りあるものになるであろう。なお、世界で進んでいる最先端の財政論争については、11月16日に発売される『変異する資本主義』で詳しく論じているので参照されたい。

中野剛志(なかの・たけし):1971年神奈川県生まれ。評論家。専門は政治経済思想。

 

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

経済対策・その2「財政問題」の正しい認識

 最新刊『変異する資本主義』ダイヤモンド社、11月17日発売)で、世界最先端の財政論争を分析した中野剛志氏が、日本における「バラマキ論争」が不毛に陥る理由を解説した記事のコピペです。

財政問題」の正しい認識がすべての出発点

 では、日本の「財政の余地」は、実際には、どれくらいあるのか(詳しい議論は、『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』を参照されたい)。

 まず、確認すべきは、日本のように、「変動相場制の下で、自国通貨建ての国債債務不履行に陥ることは、その国家に返済の意志がある限りはあり得ない」ということである。

 財務省が2002年に格付け会社宛に発した公開質問状にある通り、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」のだ。

 矢野財務次官は、もうこの段階で間違っている。よって、彼の政策論は、これ以上聴いても無駄である。

 さて、日本の財政破綻があり得ないならば、財政支出の限界はどこにあるのか。

 結論から言えば、「財政の余地」はインフレ率で判断するのである。

 財政支出の拡大は需要を拡大するので、過度な財政出動は需要過多(供給不足)を招き、インフレを引き起こす。マイルドなインフレであれば問題はないが、高インフレは国民生活に悪影響を及ぼす。

 だから、財政支出の上限の判断基準は、インフレ率だということになる。高インフレにならない限り、歳出拡大は可能なのである。

 なお念のため付言すると、財政赤字の過大を示す「高インフレ」は、あくまで需要過多による高インフレ(「デマンドプルインフレ」)であって、石油危機や凶作、あるいは最近のコロナ禍に起因する物価高など、物理的な供給制約に起因する「コストプッシュインフレ」は含まない。

 さて、そう考えると、日本は、(デマンドプル)インフレどころか、長期にわたってデフレだったのだから、「財政の余地」は十分過ぎるほどあることになる。むしろ、財政支出が不十分過ぎると言うべきであろう。

 このように、日本の「財政の余地」について正確に理解することが必要である。

中野剛志(なかの・たけし):1971年神奈川県生まれ。評論家。専門は政治経済思想。

 

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

経済対策・その1不毛の「バラマキ批判」

 最新刊『変異する資本主義』ダイヤモンド社、11月17日発売)で、世界最先端の財政論争を分析した中野剛志氏が、日本における「バラマキ論争」が不毛に陥る理由を解説した記事のコピペです。

 与党が経済対策の一環として現金給付を検討しているが、これを「バラマキ」と呼んで批判する声が多い。矢野・財務次官が、日本は財政破綻に向かっていると警告し、大規模な経済対策や消費減税といった与野党の政策論を「バラマキ合戦」と批判したのも、記憶に新しい。このように「バラマキ」とは、財政出動を批判する際の常套句となっているが、これは単に「バラマキ」というレッテルを貼っているだけで、驚くほど中身のないスカスカの批判にすぎない。なぜそうなってしまうのか?

日本の「政策論争」が不毛に終わる理由

 与党が経済対策の一環として現金給付を検討している。しかし、現金給付については、これを「バラマキ」と呼んで批判する声が多い。

 矢野康治・財務事務次官が、『文藝春秋』(11月号)誌上で、日本は財政破綻に向かっていると警告し、大規模な経済対策や消費減税といった与野党の政策論を「バラマキ合戦」と批判したのも、記憶に新しい。

 このように「バラマキ」とは、財政出動を批判する際の常套句となっている。

 もっとも、その意味するところは必ずしも明らかではない。

 もちろん、「バラマキ」とは、不必要な歳出のことを意味するのであろう。しかし問題は、バラマキ(不必要)か否かを判断する基準が、はっきりしないことなのだ。

 そこで、政策論争を意義あるものとするため、バラマキか否かの判断基準について、整理しておこう。

 第一の基準は「財政の余地」である。

 なぜ「財政の余地」が、バラマキか否かの判断基準になるのか。それは、何が必要な歳出で、何が無駄な歳出であるかの判断は、財源をどう見積もるかによって変わってくるからである。

 例えば、現金給付の対象に関して「本当に困っている人に限定すべきだ」として、所得制限を求める議論がある。

「本当に困っている人に限定すべき」というのは、確かにその通りではある。

 しかし、コロナ禍には、ほぼ全国民が困ったのである。また、長期にわたって続くデフレにも、一部の富裕層を除いて、みんな困っていた。

 ならば、現金給付の対象は、ほぼ全国民にしてもよいわけだ。しかし、それができないと思うのは、財源に限りがあると考えているからであろう。

 矢野財務次官のような財政破綻論者であれば、いかなる現金給付をも「不必要」と判定するだろう。もし、財政破綻したら、全国民が「本当に困っている人」になるだろうからだ。

 もちろん、財政破綻論者たちは「必要な歳出なら躊躇なくすべきだ」「賢い支出であれば反対しない」などと口では言う。しかし実際には、いかなる歳出増も渋るのである。財政破綻の危機に瀕しているならば、歳出削減より優先すべき支出目的などないはずだからだ。

 このように、何が必要な歳出かは、「財政の余地」がどれほどあるか次第で、大きく変わるのである。

中野剛志(なかの・たけし):1971年神奈川県生まれ。評論家。専門は政治経済思想。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

続・日本の物価が上がらない“元凶”、賃金を政策目標にしない日銀の大間違い

 一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏の「日銀の異次元緩和は賃金を目標にしなかったのが基本的な間違いだ」のコピペです。

 経済の知識がほとんど皆無の私ですが,氏の主張は傾聴に値するように思います。なぜなら,一方向からだけでなく他方向から,それも自ら動いて見,そして考察しているからです。

 また,うやむやになっているアベノミクスを評価する際にも,参考にできそうだからです。

 

異次元緩和は目的も手段も間違い

物価と賃金の関係を逆にとらえる

 日銀は異次元緩和によって消費者物価を引き上げることを政策目標とし、そのために市場から国債を買い上げてきた。

 このため、金利が低下し円安が進んだ。それが株価を引き上げた。しかし、賃金も物価も上がらなかった。

 物価が上がらなかったのは当然のことだ。

 まず、国債を買い上げても、日銀の当座預金が増えるだけで、貨幣残高は増えなかった。銀行貸し出しが増えなかったからだ。

 円安になると、日本の輸入物価も輸出物価も同じ率で上昇する。したがって、日本の交易条件は変わらない。しかし国内に対する影響は異なる。

 円安になると、輸入物価が上昇する。企業はその一部を国内物価に転嫁する。他方で、輸出物価の上昇によって企業利益が増えるが、その一部を賃金上昇という形で国内に還元することはない。

 このため、企業利益が増え株価が上がるのだ。

 しかし、このメカニズムはわかりにくいため、労働者から反対が起きない。実際、本来であれば労働者の味方であるべき民主党(当時)も、政権時代に円高を必死に阻止して円安に誘導しようとした。

 異次元金融緩和は目的も手段も間違っていた。

 第1に、賃金の上昇を政策目標とすべきであるにもかかわらず、物価の上昇を政策目標とした。

 これは、上で述べた賃金と物価の因果関係を逆に捉えたための間違いだ。

 第2に、政策手段として国債の購入を行なった。これによって日銀当座預金というマネタリーベースが増えた。しかし、金融機関の貸し出しを通じて市中に出回るマネーストックが増えたわけではない。

 だから、物価上昇率引き上げという目標を実現できなかったのは当然のことだ。

「国内にいる限り問題ない」のか?

いま直面しているのは「悪い円安」

 日本では賃金が低い。しかし、価格も安い。「だから別に問題はない」といえるだろうか?

 冒頭で紹介した事例を思い出していただきたい。昔は住めたアメリカのアパートを、いまや日本人は借りることができない。だから、企業は海外駐在員を置けなくなる。これは、日本企業が外国で活動できなくなることを意味する。

 留学もできなくなるだろう。これらは日本の経済発展にとって望ましいことではない。また介護などのために必要とされる労働力を外国から呼ぶことも難しくなる。

 それだけではない。日本国内にとどまっても問題だ。

 日本は多くのものを輸入している。それらの価格が高くなれば、日本人の生活は貧しくなる。

 実は、このことこそ、いま日本が直面しつつある問題だ。

 いま輸入物価が急上昇している。これまで企業は輸入物価上昇を国内物価に転嫁してきたが、今回はすべてを転嫁できるかどうかわからない。

 企業が負担すれば、企業の利益が減る。

 これまでは、円安が企業の利益を増やした。いま進行しつつある円安は企業の利益をも圧迫する可能性が強いという意味で「悪い円安」だ。

 詳しくは本コラム(2021年10月28日付)『日本を衰退させる『悪い円安』、日銀は緊急利上げで阻止せよ』を参照してほしい。

 今後、企業が輸入物価の上昇をどれだけ国内物価に転嫁できるかを注視する必要がある。

 ただし仮に国内物価に転嫁ができたとしても、それで問題が解決されるわけではない。これは実質賃金を下落させるからだ。

 輸入物価の上昇が一時的なもので終わることを望みたい。

 

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

日本の物価が上がらない“元凶”、賃金を政策目標にしない日銀の大間違い

 一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏の「日銀の異次元緩和は賃金を目標にしなかったのが基本的な間違いだ」のコピペです。

 経済の知識がほとんど皆無の私ですが,氏の主張は傾聴に値するように思います。なぜなら,一方向からだけでなく他方向から,それも自ら動いて見,そして考察しているからです。また,うやむやになっているアベノミクスを評価する際にも,参考にできそうだからです。

FRBがテーパリング開始を決定

依然、物価が上がらない日本

 米国ではFRB連邦準備制度理事会)が量的緩和の縮小(テーパリング)開始を決め利上げの議論が現実味を増すが、日本では物価がほとんど上がらない。

 それはなぜか。

 賃金が上がるから物価が上がるのであって、その逆ではない。日本の物価が安いことが問題なのは、それが安い賃金の反映だからだ。

 日本の物価を引き上げるには、賃金を引き上げる必要があり、そのためには技術革新を行なう必要がある。

 日本銀行の異次元金融緩和は、「賃金」でなく「物価」を政策目標としている点で基本的に誤っている。

賃金が低いから、賃貸料や物価が安くなる

 筆者は2005年、米国スタンフォード大学に赴任して、大学の近くの「オーククリーク」という団地のアパートを借りた。2ベッドルームの快適な部屋だったが、新築でもなかったし特別に豪華な建物というわけでもなかった。

 その賃料がいまは月50万円ぐらいになっている!

 こんなに高くてはもう借りられない。アメリカの物価高がよくわかる。

 もちろん、アメリカで高いのはアパート賃料だけではない。

 ビッグマックの価格は5.65ドル。日本での価格(390円)をドル換算すると3.55ドルなので、アメリカの価格は日本の1.6倍だ。このように物価が一般的に高い。

 では、日本の物価はなぜ安いのか?

 仮にいまの東京で、オーククリーク並みのアパートを月50万円で貸し出したとしよう。そうしたところで、誰も借りないだろう。それを借りるだけの給料をもらっていないからだ。

 だから、賃貸料を引き下げざるを得なくなる。

 これからわかることは、「価格が高くなれば賃金が高くなる」というわけではないことだ。

 因果関係は逆で、「賃金が高いから、高いアパートに住める」のだ。

 ビッグマックの価格も同じだ。仮にどこかのファストフード店が、アメリカ並みの高い商品を売り出したとしても、人々はそれを買おうとはしないだろう。

 つまり、「賃金が安いから、ビッグマックの価格が安くなる」のだ。ビッグマックの価格が問題にされるのは、このためだ。

 価格が安いことそれ自体は別に悪いことではない。所得を所与とすれば、価格が安いほどたくさんのビッグマックを買うことができるからだ。

 しかし、ビッグマックの価格が安いのは、賃金が低いことの反映だ。だから問題だとされているのだ。

 正常な経済では、生産性が上がるから賃金が上昇する。それによって、さまざまなモノやサービスに対する需要が増える。そして物価が上がる。

 つまり、すべての基礎に生産性の向上がある。こうした因果関係の理解こそが経済問題を考える際の基本だ。それを間違えてはならない。

 結局のところ、つぎのようなことになる。

 日本で物価が上がらないのは賃金が上がらないからだ。そして、賃金が上がらないのは生産性が上がらないからだ。生産性を上げるためには、技術開発を促進することが必要だ。

 デジタル化はその重要な柱だが、それだけではない。さまざまな面で新しい技術を導入し、生産性を引き上げなければならない。そのような努力を行なわずに、日本の物価を上げることはできない。

コストプッシュ・インフレもあるが、石油ショックなど、特殊な場合だ

 ただしそれと違う原因で賃金が上がる場合もある。1970年代のオイルショック時に起きたことがそれだ。

 このときには、まず原油価格が高騰した。それによって多くのものの価格が上昇し、それが多くの国で賃金上昇につながった。これはコストプッシュ・インフレーションと言われるものだ。

 しかし、これは特殊な事態である。

 まず、原油は価格が高いからといって使用量をすぐに減らすことができない特殊な物資だ。それについて、産油国が団結して供給量を削減した。

 このように異常な事態だった。しかも70%もの価格引き上げだった。それに合わせて、他の価格を引き上げざるを得なかったのは当然のことだ。

 終戦直後の日本でも激しいインフレが起きた。このときには、事実上の日銀引き受け国債を発行することによってインフレが起き、それを追って賃金も上がった。

 ただし、このときは、生産設備が戦災で壊滅したなかで生産額を増やしたため、需給が逼迫したのだ。だから、これは単純なコストプッシュ・インフレではない。また金融政策だけでインフレが起きたたわけでもない。

*「続」を予定しています。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

人生の後半戦,不要な契約の数々を見直せば気持ちも費用負担も軽くなる

 以下は,週刊ポスト2021年9月17・24日号(マネーポストWEB提供)の記事のほぼほぼコピペです。本当に軽くなるのであれば,すぐにでも実践したいと思います。

f:id:ohenstuff:20211113100957p:plain

人生後半戦では不要な契約の整理を

 人生の後半戦は仕事や子育てなどから解放され,自分らしく生きることが可能になる。その際に見直したいのが,長年放置してきた不要な契約や無駄な出費だ。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏が言う。

「人間は長く生きていると,その分モノや各種契約が増えて不要な出費が重なりがち。ある程度の年齢になったら集約していきましょう。整理整頓すれば管理が楽になるし,無駄な手数料や月会費などを減らすことで,老後の家計が楽になります」

 現役時代は生活費や住居費,教育費などがかさんでお金の出入りが激しく,ライフステージに応じて,複数の銀行口座や生命保険などの「備え」が欠かせなかった。しかし収入も出費も落ち着く人生の後半戦は,これまで漫然と維持していた契約を見直して「身軽」になる絶好の機会と言える。

 たとえば,子供が独立する50代後半からは保険の保障が手厚くなりすぎていないかを見直したり,リタイア後は不要なクレジットカードを解約して出費を減らすといった人生の「終い方」を考えていく必要がある。

不要な契約を見直すことは,リスク回避にもつながる

 以前は銀行の通帳や株の証券など目に見える財産が多かったが,デジタル化が進んだことにより,財産が,“見えにくい”というリスクがある。

 「株を保有している場合,以前は株券が紙として残っていましたが,いまは株券電子化で発券されません。名義人が亡くなった際に家族が株を保有していたことを把握しにくく,遺産分割が不正確になる可能性があります。

 大切なのは,残された人の負担を考えて生前に売却や解約を進めたうえで,何がどこにどれだけあるかを一覧(財産目録)にしておくことです。財産が整理されていると,一覧の作成がスムーズになるというメリットもあります」(丸山氏)

 自分や妻のために,また残される家族のためにも役立つ身の回りの整理。本人の死後に相続人が財産を整理する場合,身分を証明するために様々な書類や手続きが必要になるが,本人なら本人確認だけで済む。ただし,「いつでもできる」と思ってはいけない。

 「解約や処分の手続きが迅速にできるのは自分の意思能力があり,身体的にも健康なうちです。足腰が弱って,窓口に行くのが面倒になる前に動き始めましょう」(丸山氏)

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

 

 

「日本の賃金は米国の6割」韓国にも抜かれた日本の凋落

本文は,一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏の主張を転載したものです。

 日本のビッグマックの価格は、アメリカの6割程度でしかない。これはドルで表した日本人の賃金がアメリカの6割程度でしかないことを意味する。本来であれば、このような乖離(かいり)は貿易によって調整されるはずだ。

 だが実際にそうならないのは、日本が安易に円安を求めたからだ。その結果、技術開発が遅れ、生産性が低下した。

日本のビッグマック価格はアメリカの6割でしかない

 各国のビッグマックの価格を英誌エコノミストが毎年発表している。

 2021年の数字の一部を示すと、図表1(省略)のとおりだ。

 日本のビッグマックの価格は、現実の為替レート(1ドル=110円)で換算すると3.55ドルとなり、アメリカでの価格5.65ドルの62.8%でしかない。

 だから、アメリカ人が日本に来てビッグマックを買えば、「日本は物価が安い国だ」と感じるだろう。逆に、日本人は「アメリカは物価が高い国だ」と感じる。

 つまり、海外旅行をしたときに、アメリカ人は豊かな旅行ができ、日本人は貧乏旅行しかできないのだ。

1ドル=69円が適正な為替レート

 ビッグマックは世界のどこでもほぼ同一品質だから、どの国で買っても同じ価格になるのが自然だと考えることができる。

 それを実現する為替レートのことを「ビッグマック指数(1)」と呼ぶことにしよう。

 図表1の数字を用いていて日本の場合について計算すれば、390÷5.65=69.0となる。つまり、1ドル=69円が「ビッグマック指数(1)」による為替レートだ。

 次に、それと実際の為替レートとの比率を計算する。これを「ビッグマック指数(2)」と呼ぶことにしよう。

 今の場合について計算すれば、69.0÷110=0.628となる。

ビッグマック指数(1)」は、購買力平価と同じような概念だ。「ビッグマック指数(2)」は実質実効為替レートに対応する購買力平価は基準時点を決めて、そのときの購買力を維持するような為替レートだ。

 それに対して、「ビッグマック指数(1)」はアメリカを基準にして、それと同じような購買力を実現する為替レートといえよう。

ビッグマック指数(2)」で、

日本の賃金は31位、韓国より低い

 ここで、労働者の平均賃金とビッグマック価格の比率はどの国でも同じだとしよう。

 その場合、もし実質の為替レートが「ビッグマック指数(1)」と同じであれば、つまり、「ビッグマック指数(2)」が1であれば、その国の平均賃金はアメリカと同じになる。

 ところが、もし「ビッグマック指数(2)」が1より低ければ、その平均賃金はアメリカより低いことになる。日本の場合、この比率が0.628だから、「日本の労働者の賃金は、アメリカの労働者の賃金の約6割でしかない」ということになる。かなりの低さだ。

 実際、「ビッグマック指数(2)」の順に世界各国を並べてみると、日本は31位だ。

 ヨーロッパ諸国をはじめとして、ほとんどの国が日本より上位にくる。アメリカより高い指数の国もあるので、アメリカは第5位だ。韓国は第19位で、日本よりかなり上位。サウジアラビア(26位)、パキスタン(29位)も日本より上位。中国が33位と、日本に迫ってくる。

 実は日本の「ビッグマック指数(2)」は、1980年代には1を上回っていた。その後、低下したが、2010年でも0.96だった。2000年頃までは、世界ランキングでトップクラスだった。それに比べると、現状は著しい凋落と言わざるを得ない。

 OECD経済協力開発機構)は購買力平価による1人当たりGDP国内総生産)や就業者1人当りGDP労働生産性)を計算している。これによると、欧米諸国が上位を占め、日本がそれよりかなり低い位置にあり、そして韓国は日本より上にある。

 これは、「ビッグマック指数(2)」によるランキングと、ほぼ同じような傾向だ。「購買力平価」は抽象的な概念であり、分かりにくい点があるが、ビッグマック指数はもっと分かりやすい。

価格差を是正するように、円高になるはずが、なぜならないか?

 以上で指摘したことについては、次のような意見があるかもしれない。

 日本の労働者は、日本にいる限り、賃金は安いけれども安いハンバーガーを買うことができる。だから、アメリカの物価が高いのはとくに問題ではないという意見だ。

 しかし、そうではない。日本経済は孤立して存在しているわけではなく、国際的な取引があるからだ。

 そして、そのような取引によって、日本の労働者の賃金や国際的な地位をもっと上げるような力が働くはずなのだ。

 今仮に、現実の為替レートが1ドル=110円ではなく、1ドル=69円になったものとしよう。そのときには、日本のビッグマックの価格(390円)は、ドルで評価すれば5.65ドルとなり、アメリカのビッグマックの価格と等しくなる。

 だから、「日本のビッグマック指数(2)」は1となり、世界第5位となるのだ。

 では、為替レートをそのように動かす力が働くのだろうか?

 原理的には、このような力は働くはずだ。

 仮に、アメリカ人がほとんどコストなしに日本に来られるような世界を想像してみよう。この世界では、つぎのようなことが起きるはずだ。

 アメリカ人は、アメリカのビッグマックを買うのでなく、ドルを円に換えて日本のハンバーガーを買うだろう。すると、外国為替市場で円に対する需要が増え、ドルに対する需要が減るので、為替レートは円高になる。

 このような調整は「ビッグマック指数(2)」が1になるまで続くだろう。

 ところが、実際には上記のメカニズムは働いていない。

 その第一の理由は、現実の世界ではアメリカ人が日本に来るにはコストがかかるからだ。

 ただし、これは本質的なことではない。なぜなら、貿易をすればよいからだ。

 ビックマックは腐ってしまうので輸出はできないが、製造業の製品などを日本が輸出すればよい。そうすれば、わざわざアメリカ人が日本に来なくても同じようなことを実現できる。

 現実の為替レートで換算すれば、日本製品アメリカで割安になるので輸出が増える。そのため円に対する需要が増え、円高になるはずだ。

ビッグマック指数(2)」が完全に1にならなくても、それに近い値になるだろう。少なくとも0.628というような低い値にとどまる事態にはならないだろう。

 したがって、上記のメカニズムの実現を阻む要因が現実世界にあることになる。

生産性を上げずに手軽に利益が出る円安に依存

 円高を阻止し円安を望むメカニズムが何であるかは、前回コラム(2021年9月16日付)「円安の『麻薬』に頼り続け、日本円の購買力は70年代に逆戻り」で説明した。

 その内容を要約すれば、次のとおりだ。

 日本の輸出産業の立場からすれば、円安になると、ドル表示の日本の賃金を自動的に切り下げるのと同じことになるので、利益が増える。そして株価が上がる。

 円高になれば、逆のことが起きて、企業の利益は減少し株価が下がる。だから、円高は「国難」と言われる。

 そのため、実際に円安政策が取られ、「ビッグマック指数(2)」が1より低くなってしまうのだ。

 ここで注意すべきは、円高による利益減少は、本来であれば、技術革新を行なって生産性を引上げ、それによって利益を上げることで対処すべきだったことだ。

 しかし、そのためには、投資が必要だし、労働の配置転換なども必要とされる。それよりは手軽に利益が上がる「円安」という手段に依存したのだ。

 では、円安で対処した場合と生産性向上を実現した場合で、何が違うか?生産性向上が実現された場合には、賃金が上昇したはずだ。

 しかし、実際には、生産性が下がったため賃金は下落した。

90年代から技術進歩が止まってしまった

IT革命に対応できなかった

 技術革新によって生産性が上がれば、円高になったとしても企業の利益は減らず、株価も上昇する。また、賃金も上昇する。

 日本は、1970年代、80年代を通じて、これを実現した。為替レートは円高になったが、企業の利益も賃金も上昇した。しかし、90年代頃からそのようなことができなくなった。

 これは、インターネットを中心とする技術が発展し世界が成長率を高めたのに、日本がそれに対応できなかったからだ。

 技術開発ができなくなったために円安に頼らざるを得なくなったとも言えるし、円安で心地よい状況が実現できたために無理して技術開発を求めなかったとも言える。

 その状況は今に至るまで続いている。実際、アベノミクスでも円安(金融緩和)は実現したが、生産性向上(第3の矢)は実現しなかった。

 今盛んに言われているデジタル化の遅れとは、このことにほかならない。

 

目から鱗……話題でした。ある意味,競争にさらされないと進歩がない,特に技術分野においては。企業も人も低きに流れやすいもののようです。だから,「法人」という名が……。

 

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

「日本人の3人に1人は日本語が読めない」調査結果も!学歴による社会の分断か?

 以下は,次のような記事を再構成したもの及び≪私見≫です。

マネーポストWEB 提供 学歴による社会の分断は必然か

 知識社会においては学歴によって社会が分断され、知能の格差が経済格差につながるという残酷な側面がある。そうした中で、「初歩的な事務作業さえできない大人がたくさんいる」という現実もある。最新刊『無理ゲー社会』で、リベラル化する社会の生きづらさの正体を解き明かした作家・橘玲氏が、仕事のリテラシーに関する国際的な調査結果をもとに考察する。

 知識社会においては、当然のことながら、もっとも重要な能力は「知能」だ。問題なのは、知能の分布に大きなばらつきがあることだ。これはあまりに危険な事実なので、リベラルな社会は知能のちがいを「学力」で隠蔽し、「教育によって誰もが知能≒学力を伸ばせる」という壮大な教育神話をつくりあげた。

 心強いことに、ヒトの知能(IQ)は年々上昇しつづけているらしい。この現象は1980年代にジェームズ・フリンによって発見されたため、「フリン効果」と呼ばれている(近年では、先進国ではフリン効果が止まったともいわれる)。

 先進国は教育に莫大な予算を投じ、さらに知能指数も上がっている。不吉なのは、それにもかかわらず、「初歩的な事務作業さえできない大人がたくさんいる」という調査結果が相次いでいることだ。

 そのなかでもっとも大規模なのが、2011~12年にOECD経済協力開発機構)が実施した「国際成人力調査」PIAAC(ピアック:Programme for the International Assessment of Adult Competencies)だ。

 ヨーロッパでは若者を中心に高い失業率が問題になっているが、その一方で、経営者から「どれだけ募集しても必要なスキルをもつ人材が見つからない」との声があがった。プログラマーを募集したのに、初歩的なプログラミングの知識すらない志望者しかいなかったら採用のしようがない。そこで、失業の背景には仕事とスキルのミスマッチがあるのではないかということになり、実際に調べてみたのだ(*)。

【*拙著『もっと言ってはいけない』(新潮新書)参照。PIAACの問題例を含むより詳しい説明は拙著『文庫改訂版 事実VS本能 目を背けたいファクトにも理由がある』(集英社文庫)を参照】

≪著書も読まずに,以下の記述をすることをご容赦下さい。ヨーロッパにおける失業の背景は,ご紹介のように仕事とスキルのミスマッチもあるでしょうが,経済的状況だけでなく,それを超える移民の受入れや「仕事」に対する意識の変化などの社会的背景が影響しているようです。≫

 私がこの調査に興味をもったのは、その結果をどのように解釈しても、次のような驚くべき事実(ファクト)を受け入れざるを得ないからだ。

【1】日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない(正しく読解できない)

【2】日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない

【3】パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない

【4】65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない

≪驚くには及びません。正しく読解できる3分の2?によって書かれた日本語がそもそも正しいかどうかという問題の方が大きいとも言えます。その程度の数的思考力しかない日本人をつくる教育制度にも問題がありそうです。仕事でのPC活用は,所詮タイプライターに電卓がプラスされた程度にすぎないのでは……。≫

 さらに驚くのは、この惨憺たる結果にもかかわらず、すべての分野で日本人の成績は先進国で1位だったことだ(*)。

【*より詳細に見るとそうともいえない。16~24 歳の数的思考力では日本はオランダとフィンランドに抜かれて3位、ITスキルでは、パソコンを使えず紙で解答した者を加えた総合順位ではOECD平均をわずかに上回る10位、16~24歳では平均をはるかに下回る14位まで落ちてしまう】

 OECDの平均をもとにPIAACの結果を要約すると、次のようになる。

【1】先進国の成人の約半分(48.8%)はかんたんな文章が読めない(正しく読解できない)

【2】先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3~4年生以下の数的思考力しかない

【3】先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人(5.8%)しかいない

アメリカ人の半分は仕事に必要なスキルをもっていない

 アメリカ教育省は、仕事に必要な成人のリテラシーを計測するために、1985年、1992年、2003年に大規模な調査NAAL(National Assessment of Adult Literacy)を行なった(*)。

【*参考:American Institutes for Research (2007) Literacy in Everyday Life: Results From the 2003 National Assessment of Adult Literacy, U.S. Department of Education】

 この「全米成人識字調査」では、「文章リテラシー」「図表リテラシー」「計算リテラシー」を得点によって「基礎未満」「基礎」「中級」「優秀」に分類している。たとえば「計算」では、その基準は次のようになっている。

基礎未満(Below Basic):数字を2つ加えてATMの入金伝票を完成させる

基礎(Basic):メニューの価格を見てサンドイッチとサラダの合計額を計算する

中級(Intermediate):事務用品カタログの1ページと注文票を使って、注文する事務用品の合計額を計算する

優秀(Proficient):社員の所得と家族の構成によって健康保険料の月額がどのように変化するかを示す表を使って、ある社員の年間の健康保険料を計算する

 ここからわかるように、「基礎」的な能力(足し算ができる)だけでは一般的な事務作業にはまったく対応できない。事務の仕事に応募する最低限のスキルは「中級」以上なのだ(これは「文章」や「図表」も同様)。

 アメリカの成人の3分の1から半分は、そもそも仕事に必要なスキルをもっていない。──より正確には、アメリカの成人の43%は文章課題で、34%は図表課題で、55%は計算課題で事務系の仕事をする能力がない。

 仕事のスキルは誰がもっていて、誰がもっていないのか。計算課題の習熟度(「基礎未満」「基礎」「中級」「優秀」)の割合を、学歴(「高校中退」「高卒」「大卒」)別に集計している。

 高校中退では、高度な事務作業に必要な計算スキルをもつ者は1%しかいないが、大卒は31%もいる。一方、高校中退では89%が一般的な事務作業に必要な計算スキルがないが、大卒では26%だ。

 これを見れば、学歴による社会の分断が必然だとわかるだろう。知識社会というのは、定義上、知能の高い者が大きなアドバンテージをもつ社会であり、知識社会における経済格差は「知能の格差」の別の名前なのだ。

≪今日,日本の大衆化した大学教育が,果たして橘氏がおっしゃる学歴に相当するかどうかは疑問です。なぜなら,知能の高い者が学歴を取得しているとは言い難いからです。そしてそれにも拘らず,学歴による生涯所得の差は縮まってきているとはいえ,経済格差を生んでいます。その意味では,単に知識社会,知能の高い者が大きなアドバンテージをもつ社会と呼ぶことができないようです。そうだとすれば,「知能の格差」でない「格差」こそ,問題なのではないでしょうか?≫

橘玲(たちばな・あきら)のプロフィール】

1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。その他の著書に『上級国民/下級国民』『スピリチュアルズ「わたし」の謎』など。リベラル化する社会の光と影を描いた最新刊『無理ゲー社会』が話題に。

※≪私見≫を除く本文は,橘玲・著『無理ゲー社会』(小学館新書)より抜粋して再構成したものです。

≪勝手な発言をご容赦下さい。橘氏の主張の一端を読み,単に経済活動に迎合する人材を供給することが教育ではない,国民の教育は国家的事業であるとの思いを強くしました。国民の一人として,今後とも考察したいと思います。≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

なぜ貯金したほうがいいの? メリットって?

 中原良太氏の文のほぼほぼコピペと,それに対する≪私見≫です。

 世の中では「貯金しよう!」「貯金は大切!」みたいな話が溢れています。貯金が大事!とは言うものの,そもそも,どうして貯金が大事なんだろう?

 しかし,具体的な理由について詳しく説明してくれる人はあまりいません。そこで,貯金で得られる二つのメリットをご紹介しましょう。

メリット

1 経済的メリット(=お金が増えやすい)

2 精神的・肉体的メリット(=幸せになりやすい・長生きしやすい)

 では,これら2つのメリットについて,詳しくご説明します。

1 経済的メリット

 一つ目は「経済的メリット(=お金が増えやすい)」です。貯金をするほど,精神的な余裕ができるだけでなく,支出が減るなどのメリットが得られます。上手に使いこなせば,「お金がお金を産む」仕組みを作ることもできるでしょう。

 何よりも強調したいのが,貯金をすることで「余計な支出が減る」という点です。勘違いしてほしくないのですが,これは「貯金のために節約できる」という話ではありません。そうではなく,「貯金をするおかげで節約できる」という話ですので,順序が逆である点にご注意下さい。

 たとえば,iDeCoなどの節税制度を使って節税する方法があります。人にもよりますが,節税効果は多くて1年あたり10万~40万円ほどに及ぶ場合もあります。ほかにも,ある程度貯金がある人であれば,生命保険などの保険に加入する必要もなくなります。保険にかかる手数料を節約することもできますから,さらに家計がラクになるといえるでしょう。

 これらのメリットを組み合わせるだけでも,多くて年間数十万円の支出を抑えることができます。貯金のおかげで家計がラクになり,貯金が経済的に見て合理的だといえるでしょう。

2 精神的・肉体的メリット

 二つ目は「精神的・肉体的メリット(=幸せになりやすい・長生きしやすい)」です。米アリー銀行の調査によると,「貯金がある人ほど幸せ!」という結果が得られました。貯金が心の余裕を生み,幸福につながるというのは,ほぼ間違いないと考えておいてよいでしょう。

 他にも「お金に対する欠乏感」には,さまざまな悪影響があることが分かっています。具体的には,お金の無い人は「人間関係に苦労しがち」「学力が低くなりがち」などといわれていますので,こういった問題を回避する上でも,貯金は重要です。

 さらに,「幸せな人ほど貯金が得意!」という研究もあります。つまり,「貯金をするほど幸せになれる」→「幸せになるほど貯金ができる」→「さらに幸せになれる」のように,貯金が幸福への好循環につながると考えられます。

 お金に対する「漠然とした不安」や「ストレス」は,身体にも悪いことで知られています。スタンフォード大学の論文によれば,「貧乏な人ほど早死にする」という傾向が確認されました。長生きしたい方ほど,貯金には気を配ったほうがよさそうです。

まとめ

 近年,僕らの平均寿命は10年ごとに2~3歳ずつ伸びているという話もあります。老後の人生が伸びているということですから,今まで以上に「未来への蓄えの重要性が増している!」と言えるでしょう。

 貯金は経済的に見て合理的であるうえ,幸せにつながるし,長生きにもつながり,良いことばかりです。

 逆に言えば,貯金をしなければ「お金を損する」「不幸になる」「早死にする」可能性が高くなるわけですから,そうならないためにも,早めに行動を起こしたほうがよいでしょうね。

私見

 氏の言うところの「メリット」は「~やすい」程度に過ぎないように思いました。極言すれば,「幸せ」の枝葉末節に過ぎないのではないでしょうか。もしかすると「メリット」とすら呼べないものかもしれません。

 そもそも何を「幸せ」とするかは,人それぞれのようです。もちろん「~やすい」に「幸せ」を感じる方もいらっしゃるでしょう。それもまた,否定されるべきものではありません。

 

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

続・子供のやる気を奪う「親が言いがちなセリフ」

 子どもの成長をさまたげる親が言いがちな「NGワード」とはいったい? 教育ジャーナリストの中曽根陽子氏による新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』より一部抜粋・再構成したものを,さらに加除訂正及び<私見>を付加したものです。

 

1冊の図鑑がきっかけで大成長

 このことを体現しているご家族の例を一つ,ご紹介しましょう。

 大人に交じって学会に所属し,原生生物の研究をしている春山侑輝さんという10歳の男の子とそのご家族の話です。

 侑輝さんは,3歳のときにお母さんに買ってもらった『大昔の生きもの(ポプラディア大図鑑WONDA)』(土屋健著,ポプラ社)という1冊の図鑑から微生物・寄生虫など,ミクロの世界で起こっていることに興味を持ち,4歳になると,『DVD付 WONDER MOVE 人体のふしぎ』(講談社)を読み,免疫・ウイルスに興味を持ち始めたそうです。

 本の中にあった山中伸弥さんやiPS細胞,免疫の戦いというページを読んで,タンパク質に興味が広がり,やがて生物学に興味を持ち,原生生物の世界にのめり込んでいきます。自分の興味のおもむくままに探究を続けた結果,7歳で孫正義育英財団の財団生に選ばれました。

 「何かにハマるとそのことを知りたがるので,子どもの興味のおもむくまま,本を与えていた」というお母さん。でも図鑑を与えたのは戦略ではなく,短い本だとすぐ終わってしまって,何度も読むのが自分もしんどいので,図鑑なら長持ちするかなと思ったから……。それが今日につながるのですから,わからないものです。

 

1日に40冊もの本を読破すること

 侑輝さんは小さいときから本が大好きだったので,親子で毎日のように近所の図書館に通い,「この本は○歳用」などといったことに縛られず,図録や写真など魅力的なものが1ページでもあれば大人用のものでも与え,読めないところは読んであげました。侑輝さんに聞くと「単語は知っていたので,内容はほぼ理解できた」そうです。

 ときには,1日40冊も読んだことがあるそうですが,実はお母さん自身も熱中すると没頭するタイプで,それは特に驚くことではなかったようです。自分も好きなことに没頭する楽しさは知っているし,没頭することを許されてきたので,子どもにも同じように対応をしたと言います。

 ただ,学校では,自分の大好きな生物や科学について話しても,周囲から理解してもらえず,休みがちに。その時期が一番苦しかったというお母さんですが,財団生になって3年。今はインターナショナルスクールに転校し,楽しく学校に通っています。

 「年上の財団生と一緒に話ができて,世界が広がるのが楽しい」と侑輝さん。今は数学にも興味を持っているそうです。自分が興味を持っていることなら,ちょっと難しいことでも喜んで探究し,ここまでいくという事例です。

<親御さんが育ったころより,やる気や特性を持ったお子さんに対応できる環境はできつつあります(十分とは言えませんが)。そのようなお子さんに対応することも親御さんの務めではないでしょうか?また,そうでないお子さんについてもそれなりに対応することも同様です。お子さんの言動の結果・責任は,お子さん自身しか受け止める・とることができません。けっして親御さんが代替してはいけません。そのことだけはお子さんが知る必要はあります。ただし,お子さんには「甘え」たい時期や場面があります。そんな時にこそ,対応できる親子関係を普段の生活で培っておきたいものです。子育ては「一大事業」です。なお,親御さんは子育てを通して「親」になり,人間として成長することでしょう>

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

 

子供のやる気を奪う「親が言いがちなセリフ」

 子どもの成長をさまたげる親が言いがちな「NGワード」とはいったい? 教育ジャーナリストの中曽根陽子氏による新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』より一部抜粋・再構成したものを,さらに加除訂正及び 私見>を付加したものです。

 小中学生の子どもがいる方と話していると,「子どもが勉強をしなくて困る」ということが必ずといっていいほど話題にのぼります。

 「どうすれば子どものやる気スイッチが入るのか」「自分からやりたい!と思って,やるべきことに取り組んでくれるのか」これは,多くの家庭でのお悩みトップ3に入る問題です。

<このような悩みの多くは,ご自身の体験を忘れていることから生じています>

 私も子育てをしてきましたから,その気持ちはよくわかります。テスト前になるとなぜかよく寝る我が子に業を煮やして,「もう〇〇時だよ」と何度起こしに行ったことか……。でも,声をかければかけるほど,子どもは布団をかぶってしまったものです。

 後になって娘から,「ママが覗きに来て,言われれば言われるほどやる気がなくなった。自分が一番わかっていることなんだから,ほっといてほしかった」と言われたものです。

親に言われてやる気をなくす言葉

 そんな子どもの行動を裏付けるようなデータはいろいろあるのですが,その一つ,「勉強に関する意識調査」(株式会社すららネット)では,子どもが親に言われてやる気をなくす言葉の1位は「勉強しなさい」などの「勉強を強要する言葉」というもので,63.1%を占めていました。

 これに続く“NGワード”は,「〇〇ちゃんは成績上がったんだって」などの友人と比較する言葉と,「だからあなたはダメなのよ」といったけなし言葉。どちらも47.7%と高い数値です。

 <いずれも前述したことと同様です>

 別の調査でも,「勉強しなさい」と声かけをしても,しなくても,5分程度しか差はつかなかったどころか,「勉強しなさい」と言われた子どもの平均勉強時間は,言われなかった子どもよりも3.6分少なかったという結果があります。つまり,「勉強しろ」という声かけは,子どもの勉強時間を増やすのにほとんど効果がないばかりか,逆効果な場合もあるということです。

 それでも親は,ついつい「ダラダラしないで勉強しなさい」と言ってしまいます。ここでいったん,考え直してみましょう。なぜ私たち親は,子どもに勉強をしてほしいと思うのでしょうか?

 「だって,勉強をしないと,テストで点が取れなくて,レベルの高い学校に入れない。すると,将来の可能性が狭まってしまう……」という現実的な理由を言う人が多いかもしれませんね。

 確かに,そういう一面もあります。私も,子どもが自分の行きたい進路を選ぶためには,ある程度の成績は取ってないとダメじゃないかと思っていました。でも,それは逆で,自分のやりたいことが見つかれば,言われなくても自分から勉強するようになるのです。娘たちも親があれこれ言わないようになったら,自分で考え勉強するようになり,最終的には,ちゃんと自分の行きたい大学に進学して,留学もしました。

 さらに出産後は子育てしながら大学院に通ったりして,それぞれ自分のやりたいことを見つけて仕事にしています。

 もしお子さんがいわゆる学校の「勉強」に興味が持てず,苦手だったとしても,何かやりたいことを見つけ,それを探究していくことで,自分の道は切り開くことができます。つまりどちらにしろ,「やりたい!」という気持ちのほうが大事なのです。

 とはいえ,子どもが学ぶ楽しさを知ってくれれば,それに越したことはありません。そのためには,どうしたらよいでしょう。私は,好きなことを見つける体験の機会,興味を持ったことを広げたり深めたりする機会をできるだけつくり,子どもに与えること,そして親が子どもを信じることが大事なのではないかと,思います。

 <同感です。私の知っている方には,仕事を辞めてまで,大学院に通われた方もいらっしゃいます>

「続」に続きます。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

続・リアル店舗が「ネットに勝つため」の5つの手段!

 弓削徹氏の題・文(新刊『即買いされる技術 キャッチコピーはウリが9割』より一部抜粋・再構成)をほんの少し加除訂正・ほぼほぼコピペに私見を付加したものです。

 

リアル店舗の5つの方向性

 商店や町工場の職人さんが,自身の専門知識を教える「街ゼミ」も同じです。個店がユニークな体験やイベント性を設けてネットにはない価値を発揮する。そのためには,具体的に5つの転化が有効な方向性であると考えています。

リアル店舗5つの方向性】

①専門化

②サービス化

③イベント化

④スクール化

⑤BtoB化

 それでは,各項目を説明していきます。

 ①専門化

 狭い分野に絞り込み,「このカテゴリーでは日本一」となる──。ネット店舗は「店頭」はなく,在庫を持ちやすいため,どうしても総合化しますが,リアル店舗はバランスよく品ぞろえをしていけば,たまにしか売れない商品は淘汰されていきます。また,なんでもある店舗は,欲しいものが探しにくい店舗でもあります。

 そして,目的買いをしたい人が探してまで来店してくれるためにも,特色を出すことが必要です。たとえば,衣料品全般ではなく靴下に特化する,さらにスポーツソックス専門店へと絞り込む。そして,特定種目を決めて掘り下げていく,など。

 相模原にある文具店では「左利きグッズコーナー」を展開し,たびたび新聞やテレビに取り上げられています。左利き用商品の売上ボリュームは大きくないとしても,同店は発信力のある有名店なのです。

 ②サービス化

 家電を買うとき,空気清浄機のようにコンセントにつなげばすぐに使えるものは,ネットで買うことに躊躇はありません。しかし,エアコンや洗濯機など,設置に専門家を必要とする家電となると実店舗で買う人が増えます。あのジャパネットたかたも,エアコンの設置サービスが万全であることを強調して売上を伸ばしました。

 たとえば,あなたが電動アシスト自転車を販売するなら,新品だけを売ろうとせず,まずはバッテリー交換に特化するのも一つの方法です。そうすると,なかには買い替えのお客様が新品を買ってくれるようになるものです。また,高所得者層や高齢者は,とくに接客サービスの質を気にする傾向があります。

 その他にも,購入の相談係という役割やオーダー加工,御用聞きや出張などの人的サービスをていねいに展開することによって,ネットショップや大手チェーンでは満たせないニーズをつかむことができます。

 ③イベント化

 人は人と会いたい生き物です。また,モノはあまり買わないけれど,体験することにはおカネを惜しまない傾向もあります。せっかくリアル店舗という空間があるのですから,そこを人と出会える場として演出し,人を呼び込むのです。

 たとえば,地元の人的ネットワークや交流会の拠点になるような活動をしていくと,店舗はリアルSNSのような付加価値を持ちえます。定期的なイベントを開催し続けていると,単にモノを売る店舗ではないと認識されていくのです。

 これは,飲食店などに限りません。複数店舗が協力してはじめた朝市が,隣市からも人を集める名物になったところもあります。温泉旅館でも無数のネコと触れ合えるところ,鉄道模型が走っているところもあります。そうなると,ふつうの観光客とは違う人を強く引きつけることができます。非日常体験のできる演出もウリになるのです。

 ④スクール化

 これも,モノをコト化する考え方です。物販をソフト化し,「学びの場」として価値を高めていくのです。前述の書店なら速読教室を開く,またはホームセンターがDIY教室を,ペットショップが飼い方教室,文具店が書道教室を開いたりする。あるいは,美容室がヨガ教室を開催するなども,美を追求する共通点があるのでいいでしょう。

 食料品店であれば料理教室になります。同じ野菜を取り扱うのでも,野菜ソムリエになって専門的な知識を啓発していけば,感謝されながら販売につなげることもできます。パン屋さんならパンの焼き方,ケーキ店ならお菓子づくり教室へと展開できるでしょう。スポーツ用品店ならスポーツ指導,コーチング,用具の手入れ法を指導するなどです。

単価を上げるために企業を相手にしよう

 ⑤BtoB化

 一般の生活者を相手にするビジネスでは,単価が高くなりにくいと言えます。これが企業や団体相手となると,販売量や金額も高くなり,売上も安定する傾向にあります。たとえば,人材系や営業ノウハウ系のコンサルタントも,個人のビジネスマン向けにセミナーやコーチングをするのではなく,企業の研修案件を受注する方向へ軸足を移せば,売上は数倍にもなります。

 企業や団体向けの営業と言っても,それほど敷居が高いわけではありません。クリーニング店なら,家庭用ではなく,キャバクラなどの大型飲食店や舞台衣装専門へと展開すればいいのです。あるいは寝具店が,宿泊施設や公共施設への貸し布団サービスを売り込むこともできます。企業や役所では,災害時用の寝具の備蓄需要も開拓できるのではないでしょうか。企業や職域向け,または外商,自治体・学校向けなど,対象はさまざまです。

 以前,ある塗料メーカーから,木部の傷つき防止・光沢コーティング剤を開発し,家庭向けにセールスをしているがうまくいかない,という相談を受けたことがありました。一般家庭が,床やカウンタートップに高額なコーティングをするという習慣はありませんので,営業は苦戦して当たり前です。このケースでは,傷つき防止によって,インテリアの美しさを保つことが,集客に影響を与えるようなビジネスユースを狙うべきです。ホテルやレストラン,劇場など,施設の美観維持やメンテナンスに,もともとコストがかかっているような業態です。

 傷つき防止や光沢維持に関するエビデンスを提示でき,費用対効果が見合うと理解してもらうことができれば,受注に至るのです。実際,この会社は,営業先を上記のような施設に変えたことで,受注できるようになりました。

≪苦戦しているリアル店舗の皆さんの「仕掛け」のヒントになれば,弓削徹氏もお喜びなのでは,いや,本が売れないとご立腹?でしたら,お詫び申し上げます≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

続・リアル店舗が「ネットに勝つため」の5つの手段!

 弓削徹氏の題・文(新刊『即買いされる技術 キャッチコピーはウリが9割』より一部抜粋・再構成)をほんの少し加除訂正・ほぼほぼコピペに私見を付加したものです。

 

リアル店舗の5つの方向性

 商店や町工場の職人さんが,自身の専門知識を教える「街ゼミ」も同じです。個店がユニークな体験やイベント性を設けてネットにはない価値を発揮する。そのためには,具体的に5つの転化が有効な方向性であると考えています。

リアル店舗5つの方向性】

①専門化

②サービス化

③イベント化

④スクール化

⑤BtoB化

 それでは,各項目を説明していきます。

 ①専門化

 狭い分野に絞り込み,「このカテゴリーでは日本一」となる──。ネット店舗は「店頭」はなく,在庫を持ちやすいため,どうしても総合化しますが,リアル店舗はバランスよく品ぞろえをしていけば,たまにしか売れない商品は淘汰されていきます。また,なんでもある店舗は,欲しいものが探しにくい店舗でもあります。

 そして,目的買いをしたい人が探してまで来店してくれるためにも,特色を出すことが必要です。たとえば,衣料品全般ではなく靴下に特化する,さらにスポーツソックス専門店へと絞り込む。そして,特定種目を決めて掘り下げていく,など。

 相模原にある文具店では「左利きグッズコーナー」を展開し,たびたび新聞やテレビに取り上げられています。左利き用商品の売上ボリュームは大きくないとしても,同店は発信力のある有名店なのです。

 ②サービス化

 家電を買うとき,空気清浄機のようにコンセントにつなげばすぐに使えるものは,ネットで買うことに躊躇はありません。しかし,エアコンや洗濯機など,設置に専門家を必要とする家電となると実店舗で買う人が増えます。あのジャパネットたかたも,エアコンの設置サービスが万全であることを強調して売上を伸ばしました。

 たとえば,あなたが電動アシスト自転車を販売するなら,新品だけを売ろうとせず,まずはバッテリー交換に特化するのも一つの方法です。そうすると,なかには買い替えのお客様が新品を買ってくれるようになるものです。また,高所得者層や高齢者は,とくに接客サービスの質を気にする傾向があります。

 その他にも,購入の相談係という役割やオーダー加工,御用聞きや出張などの人的サービスをていねいに展開することによって,ネットショップや大手チェーンでは満たせないニーズをつかむことができます。

 ③イベント化

 人は人と会いたい生き物です。また,モノはあまり買わないけれど,体験することにはおカネを惜しまない傾向もあります。せっかくリアル店舗という空間があるのですから,そこを人と出会える場として演出し,人を呼び込むのです。

 たとえば,地元の人的ネットワークや交流会の拠点になるような活動をしていくと,店舗はリアルSNSのような付加価値を持ちえます。定期的なイベントを開催し続けていると,単にモノを売る店舗ではないと認識されていくのです。

 これは,飲食店などに限りません。複数店舗が協力してはじめた朝市が,隣市からも人を集める名物になったところもあります。温泉旅館でも無数のネコと触れ合えるところ,鉄道模型が走っているところもあります。そうなると,ふつうの観光客とは違う人を強く引きつけることができます。非日常体験のできる演出もウリになるのです。

 ④スクール化

 これも,モノをコト化する考え方です。物販をソフト化し,「学びの場」として価値を高めていくのです。前述の書店なら速読教室を開く,またはホームセンターがDIY教室を,ペットショップが飼い方教室,文具店が書道教室を開いたりする。あるいは,美容室がヨガ教室を開催するなども,美を追求する共通点があるのでいいでしょう。

 食料品店であれば料理教室になります。同じ野菜を取り扱うのでも,野菜ソムリエになって専門的な知識を啓発していけば,感謝されながら販売につなげることもできます。パン屋さんならパンの焼き方,ケーキ店ならお菓子づくり教室へと展開できるでしょう。スポーツ用品店ならスポーツ指導,コーチング,用具の手入れ法を指導するなどです。

単価を上げるために企業を相手にしよう

 ⑤BtoB化

 一般の生活者を相手にするビジネスでは,単価が高くなりにくいと言えます。これが企業や団体相手となると,販売量や金額も高くなり,売上も安定する傾向にあります。たとえば,人材系や営業ノウハウ系のコンサルタントも,個人のビジネスマン向けにセミナーやコーチングをするのではなく,企業の研修案件を受注する方向へ軸足を移せば,売上は数倍にもなります。

 企業や団体向けの営業と言っても,それほど敷居が高いわけではありません。クリーニング店なら,家庭用ではなく,キャバクラなどの大型飲食店や舞台衣装専門へと展開すればいいのです。あるいは寝具店が,宿泊施設や公共施設への貸し布団サービスを売り込むこともできます。企業や役所では,災害時用の寝具の備蓄需要も開拓できるのではないでしょうか。企業や職域向け,または外商,自治体・学校向けなど,対象はさまざまです。

 以前,ある塗料メーカーから,木部の傷つき防止・光沢コーティング剤を開発し,家庭向けにセールスをしているがうまくいかない,という相談を受けたことがありました。一般家庭が,床やカウンタートップに高額なコーティングをするという習慣はありませんので,営業は苦戦して当たり前です。このケースでは,傷つき防止によって,インテリアの美しさを保つことが,集客に影響を与えるようなビジネスユースを狙うべきです。ホテルやレストラン,劇場など,施設の美観維持やメンテナンスに,もともとコストがかかっているような業態です。

 傷つき防止や光沢維持に関するエビデンスを提示でき,費用対効果が見合うと理解してもらうことができれば,受注に至るのです。実際,この会社は,営業先を上記のような施設に変えたことで,受注できるようになりました。

≪苦戦しているリアル店舗の皆さんの「仕掛け」のヒントになれば,弓削徹氏もお喜びなのでは,いや,本が売れないとご立腹?でしたら,お詫び申し上げます≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

リアル店舗が「ネットに勝つため」の5つの手段!

 弓削徹氏の題・文(新刊『即買いされる技術 キャッチコピーはウリが9割』より一部抜粋・再構成)をほんの少し加除訂正・ほぼほぼコピペに≪私見≫を付加したものです。

どうすればリアル店舗はネットに勝てるのか?

 ネットの勢いに押されがちなリアル店舗。しかし方法さえ間違えなければ,ネット店舗以上の売上や知名度を得ることだって可能です。リアル店舗がネットに勝つための5つの方法をお届けします。

 読者の中にはネットビジネスをされている人のほうが多いかもしれませんが,本項では窮地に立たされているリアル店舗がネットショップに勝つためには,どんなウリの発信方法があるかについて書きます。

 近年,商店街などに代表されるリアル店舗はネットショップに押され,苦境に立たされていると言われています。お客様が来店しても,ショールーム代わりに使われてしまうという悔しいことも。

≪そんなことをしてしまったお客様を非難するものではありません≫

 しかし,リアル店舗にはリアルならではのウリをつくることもできるはずです。たとえば,どんどん閉店が進んでいる街の書店。ネット書店のほうには便利なレコメンドの機能があり,また絶版本も買えるなど,リアル書店には分がなさそうです。ところが一方で,ユニークな取り組みで話題となっている書店も生まれています。

 

「入場料」を取る書店・文喫

 東京・六本木にある「文喫」は,入場料を取る書店です。3万点の書籍を陳列し,お茶やコーヒーはおかわり自由。ここへ,1500円(税別)の料金を払って入店します。もちろん,本を買うのは別料金。このスタイルがウケて,休日には入店待ちが出るほどです(土日祝日は1800円なのですが)。

 その他にも,人と人が出会えるイベントを開催し,本を買うだけではない立体的な価値を見出している書店があります。イベントとは,たとえば著者によるセミナー開催やサイン会,読み聞かせ会などです。選書サービスをウリにして,何か月待ちにもなっている北海道の書店もあります。出版パーティを書店で開き,著者や編集者たちが集うことも,もはや当たり前になりました。そもそも,書店とは文化の交流する拠点。こうした場所が廃れてはいけないのです。

 それに,ダイレクトに店舗の人と会えることは,大きな価値であると言えます。空間自体の価値を高めて活用しなければ,書店に限らずリアル店舗は勝つことができないでしょう。そうした価値は,次の3つの要素に立脚しています。

接客力(商品知識,野菜ソムリエ,シューフィッター,サービス強化など)

商品力(PB,生鮮品強化,地域ならではの品ぞろえ,顧客の声に対応など)

体験力(雑貨・調理器具を試せる料理教室,専門家が指導するヨガ教室など)

 こうした魅力から発想していけば,ネットショップに勝つ仕組みをつくることは,それほどむずかしくないでしょう。ただ商品を並べて売るだけでは,価格にアドバンテージを持つネットショップが有利です。

 売るだけではなく,手づくり・DIY教室,ペットの飼い方相談会,枕やシューズ,インソールなどのオーダーメイド受け付け,ビュッフェスタイルのレストランなら,その場で魚をさばく,寿司を握る,惣菜を揚げるなど,いくらでも思いつきそうです。

 酒店が珍しい地酒の利き酒会を催したり,食器店が包丁とぎ師を呼んで実演したり,食材店が料理教室を開くなど,モノではなくコト化する試みは多く見られます。

≪言い古された言葉ですが,「付加価値」をつけることでしょう。原点に返るとも言うことができそうです。対面でしか,対面だからこそできるコトを見つけましょう。逆に言えば,価格のみにアドバンテージを有するネット店舗に勝負を仕掛けましょう。

続編では,より具体的に仕掛けをお届けできそうです≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>